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  • 執筆者の写真ふくち

ゆるやかに連なりましょう

鈴木健一さんが、こころの相談室ねこのてが主宰しているグループスーパービジョン(以下、GSV)を、記事の中で取り上げてくださいました。


「優しくつながれる場所」

こんな風に大事にしていただいていることは、とてもありがたいことです。 うへへ…とにやにや笑いがとまらず、朝からあやしい人になっています。




「優しくつながれる場所」とはどういうことなのか。だれとだれをつなごうとしているのか。一番のキーワードの「優しく」の風合いは、鈴木さんの文体から感じられることかと思います。 これからの鈴木さんの活動の所信表明となる記事です。どうぞ、(1)とあわせてごらんください。



ねこのて別館

記事に出てくるGSVとは、どんなものであるのかを少し、説明しておこうと思います。 単発のGSVも引き受けることがあるのですが、ここで話題になっているのは、2020年度の間、継続的に行うとして募ったグループのことになります。 今年度はCovid-19流行の影響もあり、これまで数年間やってきたオフラインでのGSVが難しくなったことから、オンラインで、メンバーもゼロから集めてみようと思い立って始めました。 現在、20人を超える方が登録していただいているSlackをプラットフォームとしており、そこがいわば、こころの相談室ねこのての別館となっています。(HPが本館、noteは別室ぐらいで…) 日程調整をしたり、感想をシェアしたりする場として、共有の文字で交流する場は不可欠でした。 TwitterのDMでは機能が少なすぎますし、LINEを交換するのはプライベートに侵襲的になりすぎると考えた時、Slackというアプリはとても便利です。 Slackに参加すること自体は無料として、そこをゼミ室あるいは部室のように、皆さんが思ってくださるといいなぁと思って、企画はスタートしました。


部活をしない部室・研究をしないゼミ室

「部活をしない部室」あるいは「研究をしないゼミ室」。 そういう場所がほしかったんだという声は、数年前から若手の心理職の方を対象にワークショップをするようになり、その中の常連となってくださった方たちを対象にGSVという場を設けるようになった頃から聞いていました。 多くの心理職が一人職場で働いている現状ですと、気軽に相談することが難しい、教えてもらえることが少ない、心理職らしい機能の仕方って何、自分のやっていることが適切なのかわからなくなる、そういった心細さが次々と語られるのです。 年に数回のワークショップで顔なじみになるにつれ、普段から連絡を取り合わなくとも、そこに「仲間がいる」という感覚を持てるだけで、安心できる、元気になるといった感想をうかがうようになりました。 そして、その感覚は私のキャリアの最初の頃を支えてくださった同業の先輩たちの顔を思い出させてくれたのです。 これが、私がGSVの開催を続けてきた理由であり、オンラインの中に散りばっている同業者の方にも提供できたらいいなぁと思った感覚なのです。


zoomを用いた部室

GSVそのものは、Slackのなかではなく、zoomで開催しています。部活はしないはずの部室ですが、これはもしかしたら部活になってしまうのでしょうか。あれ。 zoomを用いたミーティングの内容は、2種類、用意しています。 1つめは、部室の雑談です。臨床に関わる話をなんでもシェアしてよいという会です。ケースの話をしてもよいし、職場の話をしてもよし、個人的な気がかりを話してもよいし、話さなくてもよい。 カメラだってオフにしていてよいし、楽な形で参加して、お互いに話を持ち寄るだけ。 近い地域の人が集まったり、活動領域が近い人が集まると、それはそれで時機あった有意義な話し合いが展開されることもあります。 そこは専門家ばかりの会ですから、たまたま疲れていたり、大変な日々を過ごしている方がいらしても、とびかうコメントも温かいものばかりで、笑顔の多い会となります。 これは皆さんに聞くよりも話す形で参加していただきたいので、4-5人ぐらいがちょうどよく、1回は90-120分ぐらいになります。

zoomを用いた部活

2つ目は、ケース検討を行うGSVです。やっとこさ、SVらしい活動にたどりつきました。ねこのては自主練メインとはいえ、これだけは部活と呼べるかも。 鈴木さんが記事のなかで取り上げてくださったのは、この活動のことなのです。 SFA(Solution Focused Approach)を勉強していた時に私が受けていたGSVのやり方を踏襲して行っています。 参加者の一人にクライエント役(その方が臨床で担当しているケースのクライエント)をしてもらい、私がセラピスト役をするというロールプレイをします。このロールプレイは15-20分ほどのものなのですが、このロールプレイを通じて、オブザーバー役の皆さんにも参加してもらってディスカッションする形式をとっています。 セラピスト役を交代しながらやっていくと、それもまたカウンセリングをする練習になりますが、特定の技法の練習を目的においていないため、立候補がなければ私が務めるのが、参加する皆さんの心理的負担が少ないように感じて、この形に落ち着きました。


正解はクライエントだけが知っている

スーパービジョンという名称が便利なのでSV、SVと呼んでおりますし、GSVと呼んでおりますが、内容としてはそれはSVじゃないと批判を受けるかもしれません。 SFAの考え方では、クライエントさんこそが、面接で語られている問題の専門家であると考えます。 実際の面接を体験している当事者は、クライエントさんとセラピストです。 GSVにはクライエントさんはいませんから、クライエントさんのつぎにセラピストだけが実際の面接、実際のクライエントさんを知っていることになります。 スーパーバイザーは実際を知りませんし、第三者であるから好き勝手を言うこともできます。 スーパーバイザーがいろいろと考えてコメントしたその内容が、妥当かどうかは、その場ではセラピストだけが判断できます。 そして、いつも正解は、クライエントだけが知っているのです。(なんてことを書きながら、クライアントとクライエントのどっちが正解か、いまだに迷いながら書いています) ですから、ねこのてスタイルのGSVでは、事例の発表者としてクライエント役をしたセラピストが、スーパーバイザーやオブザーバーのコメントの答え合わせをできるのです。 それも、セラピストのこころの中だけで。


ロールプレイの可能性

ロールプレイを用いて行うGSVは、他のセラピストならどのような質問や応答をするか、他者の働きかけの仕方を見て学べる、盗めるというメリットがあります。 場合によっては反面教師になることもあるでしょう。それはそれでいいのです。 同じような問いかけをしていることで安心したり、自分は聞いたこともなかったような質問が出てきて発見したり。 自分のほうが上手にやれていると感じることもあれば、他のセラピストだって困るようなケースだったんだと思って落ち着いたり。 その体験は、セラピストが自分の中で起きるので、無理にシェアする必要はありません。 自分の臨床を見せることになりますから、私にとっては毎回、少しだけ緊張感がります。ですが、この見せられるだけのものをやるというチャレンジが、私の私自身を試される場に置きながら、セラピストが次回もまたそのクライエントと会うことが楽しみになったり、この仕事を続けていくうえで必要な自信や意欲を応援できるような働きかけができると嬉しいと思っています。


改めて思い描くこと

人と人とのつながりをWebと呼んだり、ネットワークと呼んだりすることがありますが、その網の目を想像することがあります。 薄いヴェールのような網が、世界に幾層も広がればいいなぁと思うのです。 私の広げる網も、目が大きく、全体は小さなものでしかありません。 けれども、鈴木さんがこれから広げる網があり、Le:selfさんが広げている網があり、金子書房さんが広げてくださった網があり、私が挙げきれないほど、知ることができないほど、いろんな種類で、いろんな色合いで、いろんな網目の網が、各地で広げられる。 いくつもの網が広がり、重なりあうことで、同業者を孤立させず、また、迷子にさせず、必要な時に誰かの知恵を借りたり、助けを求めることができるものとなればいいなぁ、と、そんな風に夢想しているのです。 同業者の方たちが崖っぷちから転げ落ちそうな気分になったときに、いろんな人たちが下でふかふかふわふわのセーフティネットを何枚も広げていると思い描いてもらいたいのです。 この仕事は、初心者マークはつけられませんし、相談室ではたいてい一人でケースと向かい合います。その一人で向き合う背中に、そっとねこのてをあてたいと心から祈っています。




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