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キャリア形成と夢の中

  • 執筆者の写真: ふくち
    ふくち
  • 1月20日
  • 読了時間: 3分

「どうやったらキャリアを形成できるのか?」


この問いを投げられるとき、私は少し困ります。

ちょびっとフリーズしてしまう。

その理由を考えてみました。


正直に言えば、私はこれまで、キャリアについてあまり考えてこなかったのだと思います。

私が受けたのは、現在の臨床心理士や公認心理師の養成課程とは異なる、いわば前世代の教育でした。

そこには、キャリアラダーやキャリア形成といった概念は、ありませんでした。


私が「キャリア」という言葉を聞くと、どうしても、成功や成長といった右肩上がりの物語が浮かびます。

それは専門性を深めるという意味よりも、社会的に成功すること、高収入を得ること、あるいは目に見えるポジションを獲得することを指しているように感じます。


日本の社会全体を見た時に、「キャリア」という言葉が、誰もが目指すべき成功譚として語られるようになったのも、2000年以降のことではないでしょうか。少なくとも、私にとっては、比較的最近の感覚です。

その頃に、キャリアはキャリアアップの略語であるかのような意味合いで定着しました。

「キャリア女性」がメディアに取り上げられ、その延長に、「バリキャリ」という表現もあります。

努力家で成果を出す一生懸命な女性は、疲れない人、私生活を犠牲にしても平気な人として扱われるようになり、揶揄の対象にされることさえあります。


キャリアという言葉に、そのような意味づけをしてしまっているものですから、キャリアラダーやキャリア形成という表現に、私は戸惑うのだと思います。


看護師のキャリアラダーは、よく考えられていると思います。

次に何を身につければよいのか、どの段階でどの役割を担うのかが示されており、誰がどこで働いても、一定の専門性を発揮できることを目指した仕組みです。

看護師という職業が成立する過程、社会専門職として確立していった歴史を感じます。


一方で、心理職の専門性は、個別のケースに向き合うことそのものにあります。

そのうえ、医療、教育、福祉、司法、産業、私設開業と、あまりにも多様な領域にまたがる仕事であるため、すべてを包含した共通のキャリアラダーをつくることは、そもそも難しいのだと考えます。

私が大学院で学んだ講師のひとりは、3つ以上の領域で働いて経験を積むべき、非常勤もやむなしと話していたことを覚えています。しかし、これは、あまりにも労働者として不安定です。

それに、職場を転々とすることで、個人の中にも、組織の中にも、ノウハウが蓄積されにくくなることを懸念します。


これは、私がひとつのところで働き続けているから、反抗心から言いたくなるのかもしれませんね。

私にとっては、心理職になることが夢でした。

そのために大学院に行き、就職のために資格を得たいのに、臨床心理士の受験資格を得るために臨床経験が必要であるとは何事か!とぷんすかしながら就職活動をちょっぴりして、今の職場にたどりつきました。そこで働き始めたことで、私の夢はかないました。


それから、ずっと、私は夢の中にいるのです。

ですから、それ以上はないのです。

この夢が醒めないようにあがくだけ。

夢の中にいられるように、夢のままでいられるように。


私の臨床は、洗練されたものではありません。どったんばったんとじたばたしながら、やってきました。

少しでも目の前の人のお役に立てるように、自分を磨き続けようとしてきたつもりではあります。できないことに出会うたびに、できるようになるように。学んでも学んでも、できることよりできないことのほうが多いように、今も感じます。

その無力感やむなしさを抱えながらも、しぶとく、この世界で生きていく。その一例になったり、応援になったり、少しはできたでしょうか。


ただ、この夢の中にいられるように。

それが私の願いでした。



 
 

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