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  • 執筆者の写真ふくち

多重関係のこと

こころの相談室ねこのては、公認心理師や臨床心理士など、心理援助職の方に向けてのスーパービジョンやコンサルテーション、カウンセリングを行っています。 その場合、多重関係がおきないの? という、ツッコミはこれまでいただいたことがありませんが、私どもの考えを少しまとめておきたいと思います。


多重関係が大きく問題となるのは、一番には、相談者と被相談者との間に性的なものが持ち込まれたときではないかと思います。 それはもちろん、NGです。公認心理師の信用失墜にもつながる、一番のNGのひとつだと考えます。 また、相談者を自ら雇用したり、結婚や就職を斡旋したり、というのも、NGです。 そういう金銭的な搾取は二番目の大きなNGだと考えます。なにか余計なものを売りつけるとか、そういうことも含めて。


地方都市で、比較的、住んでいる場所と働いている場所が近いと、うっすらとした多重関係は避けようがありません。 御近所の方が知らずに、あるいは、知って、私の職場に受診なさることもあります。 逆に、通院中の方と、職場以外の場所でばったりと顔を合わせることもあります。 大学院生の頃は、職場の外でクライエントと出会ったら目礼して沈黙を守って立ち去るべきと習ったものですが、先方から呼びかけられる、手を振ってご挨拶していただくなど、予想以上にフレンドリーな患者さん達に、働き始めはどぎまぎしてしまったことも多々ありました。 その時の私の指針となるのが、職場の上司に言われた「友人として最初に出会ったなら治療関係が生じても友人、患者さんとして最初に出会ったなら何事があっても患者さん」という線の引き方です。


この指針は、ねこのてのオンラインでの御相談をお引き受けするにあたっても、大事にしているポイントです。 もともとのお知り合いの方が利用してくださる時には、その御相談の時間だけが非日常となるように、決してそれ以外の場面で口外しないことで、友人関係を維持しています。 御相談してくださっている方と、他の場面、たとえば研修などで偶然お会いすることがあったとしたら、やはり、御相談なさったことがある方だということを決して口外しないことで、しれっとその場その時間を過ごさせていただければと存じます。


私は、多重関係の禁止という言葉は、心掛けたほうがよい倫理的な目標ではありますが、そのままでは実現しづらいものであるので、たまに言い換えることを試みます。 たとえば、目の前の人を自分のために利用しないこと、と言い換えてみたらわかりやすくないでしょうか。 あるいは、目の前の人を自分のために搾取しないこと、と言い換えてもいいと思います。 そう考えると、面接場面以外の場面に、面接の中のことを持ち出してはいけないことだって、自然に理解されると思うのですがいかがでしょうか。


そんな風に考えておりますので、御利用の開始時にメールアドレスとお名前などを記載していただいておりますが、基本的に、こころの相談室ねこのてから御連絡を取ることはありません。 御連絡があった時にだけお返事する、受身的な対応しかいたしません。 知り得た個人情報を他に利用することはありません。研修などの情報を宣伝することもありません。 御連絡がつかなかったときのために電話番号を記載していただくほうがいいのだろうかと考えたこともありましたが、今のところ、必要性を感じたことがありませんので、本当に最小限の情報だけを書いていただくようにしています。 それがよいかどうかは、御利用の皆様の判断にお任せしたいと思います。




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